マジックバーに全盲のお客様が来た話。

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はじめに。


マジックバーには様々なお客様がご来店されます。

私が営む手品家高知店ではカップルや男性同士のサラリーマンなども多いのですが・・

意外と家族連れのお客様も多いです。

家族連れのお客様の場合ですと、小さなお子様から、最高齢では89歳の女性にご来店頂きました。

その他で珍しいお客様ですと、外国人の方や有名な歌手や漫画家の方にもご来店頂きました。

もちろん、マジシャンの方ならば多数、ご来店いただいております。

今までご来店いただいて、印象に残っているお客様の一人と言えば・・

全盲のお客様に一度、ご来店頂いた事があります。

マジックバーに来店された全盲のお客様。


それは、数年前・・

サングラスをかけた長髪の男性で、健常者の男性と2人で高知県外からのご来店でした。

歩行の際に安全を確保する、白杖(はくじょう)と呼ばれる杖(つえ)を手にしていたので、目に障がいがあることは、すぐにわかりました。

全盲という事は、お連れの男性から聞きました。

マジックは主に目で楽しむエンターティメントです。

ですので、正直・・

全盲の方にどうやって、マジックを演じれば良いのか戸惑いましたが・・

お連れの男性が、

「いつも通りやって。こいつは目が見えなくても雰囲気で楽しめるんだから。」

と、おっしゃてくれたので・・

始めにいつも演じているカードマジックを披露しました。

全盲の男性は目が見えないのですから、選んだカードはもちろん、マジックの現象は一切、目に見えていないはずです。

ですので、お連れの男性が耳元で現象を一つ一つ解説している様子でした。

全盲の男性は笑顔でした

次にスポンジボールとポケットリングを演じました。

そちらも同じく、お連れの男性に現象を解説してもらいながら・・

さらに手で触って確認してもらうように工夫して演じてみました。

全盲の男性は笑顔でした。

そんな感じで・・

音楽を流して演じるステージショー風のマジックまで普段通りのショーを披露しました。


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全盲の人がマジックを楽しめるのか?


はたして・・

全盲の男性にどのくらい楽しんでもらえたのかは正直、わかりません。

ただ・・

終始、笑顔でした。

もし・・

マジックを健常者と同じくらい楽しんでもらえたのであれば・・

それは・・

私の能力では決してありません。

私は普段から健常者の方に演じているマジックを演じただけです。

ですので、その男性が・・

全盲でありながらマジックを楽しむ能力があった。

という事でしょう。

よく、大人の方がマジックを見た際に・・

「これは子供に見せたら、もっと喜ぶだろうな。」

と、言って頂けますが・・

実はマジシャンとしては大人を楽しませるよりも、子供を楽しませる方が難しい部分があります。

それは・・

小さな子供はマジックを楽しむ能力が大人よりも低いからです。

例えば・・

幼稚園以下の子供はトランプゲームをした経験すら無かったりします。

ですので・・

トランプというものが、どういうものかという事が理解出来ないのです。

その為・・

トランプを使ったマジックを見ても、現象が大人よりも理解しずらくなります。

小さな子供にマジックを披露する際には、大人に披露する場合よりも、出来るだけ複雑な説明等は必要としない、見ているだけで理解出来るような、比較的、単純な現象のマジックを選んで披露しなければいけません。

つまり・・

知識や経験が豊富な人ほど、よりマジックを楽しむことが出来るのです。

それは、マジックに限らず、その他のエンターティメントにおいても言える事でしょう。

例えば・・

日本で野球やサッカーのテレビ中継が他のスポーツ中継と比べて、なぜ人気なのか?

それは・・

人気のある選手が多いということもあるでしょうが・・

日本では、

野球やサッカーは子供の頃に公園で遊ぶ際や体育の授業で経験したことがある人が多いからです。

ある程度のルールなら、ほとんどの人がわかるでしょう。

しかし・・

ゴルフのテレビ中継等はゴルフを趣味にしている人には人気ですが、そうでない人は、あまり興味を示さないでしょう。

ですので・・

多くの能力がある人ほど、多くのエンターティメントを楽しむ事が出来る、

と言えるでしょう。

それこそが・・

感性が優れている、

ということです。

感性が優れている人ほど、人生を楽しむことが出来ると言えるでしょう。

最後に。


全盲のお客様がどのような能力でマジックを楽しむ事が出来たのかは、私には、わかりません。

私は目が見えるゆえに目に頼って楽しんでいるからです。

しかし・・

全盲のお客様は、目が見えない代わりに、私には無いような感性でマジックを楽しんだのかもしれません。

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*画像「Pixabay」より

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