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目次
はじめに。
マジックに特許や著作権はあるのか?
という質問を、たまにされますが・・
実際のところは、マジックの世界には著作権等、法律で保護されているモノは少ない状態。
残念ながら・・
マジシャンの世界はパクり、パクられ放題の状態です。
しかし・・
実際にマジックに著作権は発生しないのでしょうか?
マジックにおける知的財産権について。
知的財産権とは?
知的財産権とは簡単に言えば・・
形の無い知的な情報、アイデアの財産を守る権利です。
特許権、著作権、商標権等が、この知的財産権にあたります。
特許権とは?
特許権とは、新しい物を発明した場合に、発明した人に与えられる権利です。
つまり・・
特許は「新しいアイデア」で物を作った場合に得る事が出来る権利です。
マジックで特許を得るとすれば・・
マジックのトリック、もしくは道具であれば可能でしょう。
しかし・・
テクニックやルーティーン等、形の無いもので特許を取得するのは難しいでしょう。
それと・・
特許を取得するには、特許庁への出願と審査が必要です。
さらに・・
出願する為の費用もかかり、特許を維持する為にも費用が毎年、かかります。
特許権の有効期間は基本的には20年です。
ですので・・
20年以上経過すると、基本的には特許権は無くなります。
著作権とは?
著作権とは、音楽、小説、絵画、写真等の作品を作成した人に与えられる権利です。
つまり・・
著作権は特許とは違い「形の無いもの」でも「作品」であれば取得出来る権利です。
さらに・・
特許権を取得するには特許庁への取得が必要ですが、
著作権は出願する必要もなく、創作をした時点で自然に発生する権利です。
基本的に著作者の死後50年まで保護されます。
ただし・・
著作権を主張する為には、自分が創作した作品であるという証拠が必要になります。
ここが著作権の難しい所もあります。
マジックにおける著作権を取得出来る部分は・・
マジックに関する書籍やレクチャーDVDであれば、その内容に著作権が発生するでしょう。
ただし・・
やはり、テクニックやルーティーンの部分においては、著作権を主張するのは難しいです。
なぜなら・・
著作権法で保護される著作物とは・・
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)
となっています。
つまり・・
著作権は表現や個性を保護するものなのです。
マジックを演じるマジシャンには、それぞれの表現や個性があったとしても・・
テクニックやルーティーン等、
「マジックを演じる為のノウハウ」自体は表現とはならないからです。
例えば・・
料理のレシピにも著作権は発生しません。
最近、ネット上の「クックパッド」というサイトに、誰でも料理のレシピを投稿出来るのは、その為です。
料理のレシピというのは、表現ではなく「情報」だからです。
単なる情報だけのものには著作権は発生しないのです。
「マジックを演じる為のノウハウ」だけであれば、表現ではなく情報となるのです。
ただし・・
料理のレシピ本には著作権が発生しますので、レシピ本を勝手に印刷して他人に売ったりすることは著作権法に違反します。
商標権とは?
商標権とは「誰が作った商品なのか?」を表す目印を明確にする為に、その目印を保護する為の権利です。
つまり・・
ブランドの名前やロゴ、
また・・
マスコットやキャラクター等にも商標権を取得することが出来ます。
商標権を取得するためには特許庁への出願が必要です。いわゆる、商標登録です。
ただし・・
同じような商標が、すでに存在していないかの調査と、さらに、費用もかかります。
商標権の有効期間は基本的に10年ですが・・
有効期間が切れても、更新が出来ます。更新を繰り返せば半永久的に商標権を得ることが出来るのです。
マジックに関する事で商標登録を出来るものがあるとすれば・・
マジシャンの芸名やオリジナルマジックを商品化した際の商品の名前等であれば可能でしょう。
他人の考案したマジックを真似ても良いのか?
他人が考案したマジックのテクニックやルーティーンを真似たとしても、ほとんどの場合、そこに著作権は発生していませんので・・
法律的には問題ないという事になります。
ただし・・
法律的には問題は無くても、モラル的には問題になる場合があります。
そもそも・・
知的財産権とは「誰が作ったものなのか?」を明確にする為の法律なのです。
知的財産権が無いと、例えば・・
ある人が新しい発明をして商品を作ったとします。
しかし・・
別の人が真似をして同じ商品を作り・・
それを、自分が発明した商品と嘘の主張をするかもしれません。
そうなると・・
せっかく、苦労して発明をした人の開発コスト等の経費が無駄になって損害が生じる恐れがあります。
つまり・・
知的財産権とは、新しい発明をした人に損害を与えないように保護する為の制度なのです。
ですので、マジックにおいても・・
例え法律的には著作権等が無かったとしても、考案者に損害を与える事をするのはモラル的にダメでしょう。
例えば・・
他人の考えたマジックを勝手に種明かしする。
他人が考えたマジックを勝手に商品化して販売する。
他人が考えたマジックを、自分の考えたものと嘘をついて演じる。
等です。
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マジックにも知的財産権があった方が良いのか?
知的財産権とは・・
新しい発明をした人に損害を与えないように保護する為の制度
です。
ここで言う、損害とは・・
ずばり、金銭です。
ですので・・
単純に知的財産権を取得した方が考案者が儲かる場合は、あったほうが良いでしょう。
しかし・・
そうでない場合は、わざわざ知的財産権でマジックを保護する必要はないと考えられます。
例えば・・
マジック以外の分野でも、あえて特許権を取得しない例があります。
その1つがカラオケです。
しかし中には、あえて知的財産権を登録しないという例が存在します。
その例の一つがカラオケです。
カラオケの発明者である井上大祐氏はカラオケの特許を取らなかったことで、
「年間100億円に達するであろう特許使用料を貰い逃した」とも言われていますが、
一方で「特許を取らなかったのでカラオケが英語圏の辞書に載るほどに普及した」とも言われています。
特許をはじめとする知的財産権を取得しない、または権利を主張しないことで創作物や製作物が伝達し、さらに発展する可能性もあります。
また、井上氏はタイム誌が選んだ「世界を変えたアジアの20人」に選ばれるなど、その名は世界的に知られています。
知的所有権を取得しない場合は、金銭的な利益がまったく得られない可能性が高まりますが名誉などの人格的な利益を得られると考えるべきかもしれません。
つまり・・
カラオケの考案者は知的財産権を取得しなかったことにより、
カラオケが世界的に普及して、金銭的には損をしたかもしれないけど、その分、世界的な名誉と人格的な利益を取得したという事です。
マジシャンが売り込みたいものは、マジックそのものよりも・・
マジシャンとしての自分自身でしょう。
マジシャンは素晴らしいマジックを考案しても、演じる人は限られていますので、それだけで大金を得られる例は少ないと考えられます。
しかし・・
素晴らしいマジックを考案して、そのマジックが世界的に有名になれば、考案者の名前が知れ渡り、名誉を得られる可能性があります。
ですので・・
マジックは知的財産権という法律で独占しない方が得をするとも考えられます。
ただし・・
それでも、自分の考案したマジックを勝手に演じられたくない・・
と、思うマジシャンもいるかもしれません。
時間や労力をかけて考案したマジックを、勝手にパクられたら嫌な気持ちになる場合もあるでしょう。
しかし・・
もし、知的財産権でマジックの保護が出来たとしても、他の全ての人が演じることを禁止出来るというわけではありません。
例えば・・
学校の文化祭等、金銭の発生しない非営利で限られた人にだけ見せる場所であれば音楽やキャラクター物の使用等も著作者の許可を得る必要なく、自由に演じて良いとなっています。
文化祭等で吹奏楽部が自由に好きな演奏を出来るのは、その為です。
実際に、学校の吹奏楽部は作曲者に著作権料を払う事は、まず、無いでしょうし、また、連絡して許可を得ることも無いでしょう。
つまり・・
知的財産権で保護出来るのは、金銭の発生する営利目的の場合に限ってです。
パフォーマンス全般において、非営利目的の文化祭やボランティア、また、友達の前で演じる等は、知的財産権を用いても禁止することは出来ません。
なぜなら・・
それを禁止してしまうと、文化そのものが発展しないでしょう。
そもそも・・
どんなに素晴らしいマジシャンでも、始めは誰かの真似からスタートするはずです。
例えば・・
新しい鳩出しマジックを考えた人がいるとします。
しかし・・
その人も、始めは誰かの鳩出しマジックを真似て練習をしていたはずです。
鳩出しマジックはアメリカのチャニング・ポロック氏が世界的に広めたマジックですが・・
考案者は諸説あり、はっきりとしていません。
ですので・・
鳩出しマジックを演じるのに考案者の許可を得るという事は、ほぼ不可能です。
演じる為に必ず考案者の許可が必要となると・・
誰も鳩出しマジックを演じられなくなってしまいます。
つまり・・
マジックを演じる側にも、営利目的でないのであれば、ある程度、自由に演じる権利があるのです。
しかし・・
もちろん、他人が考案したマジックを勝手に種明かしする等、モラルに反することはしてはいけません。
まとめ。
①マジックのトリックや道具は出願すれば特許を取得できる場合がある。
②マジックに著作権を発生させるのは難しい。ただし、書籍やレクチャーDVDには著作権が発生する。
③マジシャンの芸名やマジックを商品化した場合の名前は出願すれば商標権を取得できる可能性がある。
④他人のマジックを真似る事は法律的には問題ない。ただし、勝手に種明かしをする。勝手に商品化する。自分の考案したマジックとして演じる等はモラルに反する。
⑤マジックは知的財産権を取得しない方が世界的に広まりやすいので得するのかもしれない。
最後に余談ですが・・
ディズニーは大変に商標権に厳しい団体だそうです。
バルーンアートでミッキーマウス等、ディズニーのキャラクターを作って勝手に販売をしたり・・
また・・
自分のホームページにディズニーのキャラクターの創作物を勝手にアップして宣伝をすると、クレームが来る恐れがありますので気を付けておいた方が良いでしょう。
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*画像「Pixabay」より
ヴァリエーションでなく完全に独自なオリジナル・マジックしか演じないマジシャンもめったにいないでしょうから、パクリもモラルに反しない限りまあ持ちつ持たれつといったところなんでしょうね。
ただ、「マジックを演じる為のノウハウ」やレシピは「表現」ではなく「情報」だとのことですが、この点は気になりました。たとえば、「次に大さじ2杯の砂糖を加える。」という「文」そのものは表現であるはずです。「その後砂糖大さじ2杯を入れます。」と言い換えれば、表現が変わったが、内容は同じということになります。ではその内容は「情報」なのかというと、確かにその文を読む人にとっては情報ですが、その創作レシピを書いた人にとっては、他から仕入れた情報ではなく、自分のアイディアでしょう。
これはマジックでも同じで、”Twisting the Aces” のルーティーンはダイ・ヴァーノンのアイディアです。”More Inner Secrets of Card Magic”の中の”Twisting the Aces”の解説は、そのアイディアを表現した著作物ですよね。
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、料理のレシピにおいても、レシピ自体はアイデアですが、それを文字に書き起こしたレシピ本などは表現となり著作物になるはずです。
ですので、レシピ本自体は著作物として保護されるでしょうが、アイデア自体を守る知的財産権は著作権ではなく、特許権ですので、料理のレシピやマジックのトリックなどは著作物の対象にはならないという意味であり、現状としては法律でアイデア(情報)を保護するには考案者本人が特許申請をするしかないのでしょう。