プロとして食べていけなくなったマジシャンの悲惨な末路。

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はじめに。


とあるプロマジシャンの物語です。

あなたは彼の人生は幸せだったと思いますか?

プロとして食べて行けなくなったマジシャンの人生。


手に一組のトランプを握りしめながら・・

自分の歩んできた人生を振り返ている、孤独な男性がいました。

平成の終わりから20年の月日が流れようとしていた頃に・・

第1章・セミプロマジシャンと自称する青年。

ときはバブルがとっくに崩壊した平成の時代。

とある地方都市に一人の若者がいました。

名前はマサヒロ。

年齢は23歳。

学校を卒業後、地元の企業に就職したものの3年ほどで退職。

現在はアルバイトで食い繋ぎながら、20歳を過ぎて実家暮らしの親のすねかじり。

唯一の特技はマジック。

子供の頃から勉強は出来ず、運動もイマイチ。

だけど、テレビで見て興味を持ったマジックを少しばかり練習して同級生に披露したら、その日は教室の人気者になれた。

その日からマジックの虜になった。

「お前、プロマジシャンになれよ。」

そう、友達から言われたものの、根は引っ込み思案な自分に、そんな行動をする勇気はない。

友達だって、本気でプロになれと言っているわけでないのは、わかっている。

半分はからかっているのだ。

引っ込み思案な性格は捻くれた思考にも繋がってしまう。

そんな学生生活を得て、親に言われるまま平凡な人生を送るつもりではあった。

しかし・・

平凡な社会生活は甘くはなかった。

職場での人間関係に疲れて3年で退職。

気が付けば定職にもつかず、良くてフリーター、最悪ニートの肩書きの青年になっていた。

しかし・・

そんな青年の人生を大きく変えるきっかけがあった。

ある日、友人に誘われて地元のバーへ立ち寄った。

友人「マスター、こいつマジックがスゲーんだよ。」

マスター「え?マジシャンなの?何か見せてよ。」

マサヒロ「じゃあ、少しだけ・・」

少しだけとは言ったものの、見せる気満々でポケットから直ぐにトランプを出す。

引っ込み思案な性格なのに、自信のある事だけは積極的。

「スゲー!何で?」

「やばーい!初めてこんなの見た♡」

たまたま隣にいた女性客まで黄色い声を出してくれた。

快感なひと時である。

マスター「プロなの?」

マサヒロ「い、いや・・セミプロです・・」

アルバイトで食いつなぎ、年に2回ほど交通費だけもらって、地元のイベントなのでマジックをする機会がある程度。

それを、セミプロと自称する見栄っ張り。

マスター「プロ目指してるんだね。じゃあ、うちでバイトしない?ちょうど募集してるんだよ。」

マサヒロ「え・・?はい。いいですよ。」

そんな、やりとりでバーでアルバイトをする事になった。

挿入画像01

第2章・様々なお客様に来てもらいたいマジックバー。

バーでアルバイトを始めてから2年の月日が経つ。

マサヒロは25歳。

彼には、ある目標が出来ていた。

マジックバーをオープンする事。

引っ込み思案な性格ではあったけど、良く言えば彼の性格は謙虚。

なぜか、謙虚さはバーのお客にウケた。

マジックも一定数のお客には新鮮な特技としてウケていた。

彼を目当てに足を運ぶお客もいた。

カクテルを作る腕前も2年働くと、それなりに。

マサヒロはついにマジックバーをオープンさせた。

挿入画像02

資金は親から借りた。

小さな箱の店だが、若き店舗オーナーである。

ただし・・

マジックバーではあるが、マジック目当てではないお客にも来てほしい。

なので、店にはカラオケも設置。

カクテルはシェーカーも振るし、本格的なものを提供出来るようにした。

オープン日当日・・

夜8時にオープンしたけど、1時間経ってもお客が来ない。

マサヒロは不安であった。

9時30分を過ぎた頃・・

ガチャ。

扉の音がした。

「いらっしゃいませ!!」

ついに初客が来店。

マジック仲間であった。

その後・・

2年間働いていた店の常連客や、閉店間際にはマスターもお祝いでかけつけてくれた。

まずまずの滑り出し。

一ヶ月後・・

売り上げを計算すると十分な数字であった。

「俺は立派なマジックバーのマスターに昇り詰めた。」

マサヒロは自信に満ち溢れていた。

1年後・・

店の売り上げは順調。

マサヒロには地元のイベントでマジックショーの依頼も、時々、入るようになっていた。

「プロマジシャンなんですか?」

「はい。プロですよ。」

俺はマジックで飯を食べている。

そんな自信があった。

しかし・・

実際のところ、店の常連はマジックをあまり見ようとはしない。

酒を飲んでカラオケを歌ってはしゃぐ。

店の雰囲気は単なる小さなスナックであった。

別にマジックを見なくても、お客様に楽しんでもらえればそれでいい。

それが、マサヒロの信念。

2年後・・

相変わらず店は順調。

しかし・・

イベント出演の依頼はあまり来なくなっていた。

マサヒロは大勢に見せるステージマジックはあまり得意ではなかった。

それどころか・・

売り物のマジックをただ披露していた程度。

「俺の得意分野はクロースアップマジックだから。」

そう、自分に言い聞かせていたし、店のお客にもそう語っていた。

3年後・・

店の売り上げがイマイチ伸びなくなっていた。

実家暮らしであったし、生活に困らない程度は稼いでいた。

しかし・・

マサヒロは28歳。

将来、結婚してもやっていけるのだろうか?

バーのマスターになると、ある程度はモテるものである。

マサヒロは彼女が出来ては直ぐに別れて、また、新しい彼女が出来る。

そんな、恋愛遍歴を繰り返していた。

学生時代は引っ込み思案で消極的な性格とは大違いである。

ただし、実際、別れる原因は彼女が直ぐに離れて行くからであった。

「マスターはモテるよねー。」

男性客から、そういう評判をもらっていた。

「いやいや、全然ですよー。」

そう、謙遜しながらも、内心は自分はモテるという自信を得ていた。

それは、勘違いなのかもしれないが。

4年後・・

マサヒロの店は売り上げが落ちていた。

「何でだろ?」

料金は他店よりも安くて設定。

接客の評判も決して悪くない。

カクテルの種類も豊富。

カラオケもある。

そして、何より得意なマジックもある。

「まぁ、不景気な世の中だから。」

それが、マサヒロの答えであった。

ある日・・

「うちに来ませんか?」

県外でマジックバーを営む、親しい知人から、そんな声がマサヒロにかかった。

しかし・・

「冗談じゃない!田舎町でも俺はプロマジシャンであり、マジックバーのオーナーだぞ。」

今更、雇われになるのはプライドが許さなかった。

そのうち、景気が良くなれば、店の売り上げも取り戻せるはず。

「今の政治はダメだ。」

いつの間にやら、そんな口癖がマサヒロには出来ていた。

5年後・・

ついに、マサヒロはアルバイトをするようになっていた。

昼間は週に3回、アルバイトをしながら、夜はマジックバーを営む生活。

実家暮らしながらも、マサヒロの生活はギリギリであった。

というよりも・・

週に3回のアルバイトの方が収入が多い。

それでも・・

プロマジシャンという肩書きにマサヒロは拘っていた。

いや・・

「俺は本当にプロマジシャンなのか?」

「プロと名乗る資格があるのか?」

心の奥では、そんな自問自答が出てきていた。

しかし・・

その自問自答からは背を向けていた。

そうしないと、生きる希望を失いそうであった。

第3章・プロマジシャンであり続けたい中年男。

マサヒロは40歳になろうとしていた。

ついに・・

店をたたむ覚悟が出来た。

まがいなりにも、10年以上プロマジシャンとして活動して、マジックバーのオーナーとしてやって来た。

この経験は必ず、次の仕事でも役立つはず。

そんな自信があった。と言うよりも、そう自分に言い聞かせた。

しかし・・

この年齢で新しい職に付く不安もあった。

マサヒロは居酒屋に勤める事にした。

接客には自信があったし、マジックも披露して役立てる事が出来るだろうという理由からである。

根は真面目な性格であったので、それなりに、仕事をこなしていた。

ただし・・

年下の先輩から飲み物の作り方や接客態度を注意される事にプライドを傷付けられる日もあった。

ところが・・

マサヒロには再び新しい目標が出来ていた。

「もう一度、マジックバーをオープンさせたい。」

それから、5年後・・

コツコツと貯めた、貯金でマサヒロは再びバーをオープンさせた。

第4章・さらにサービスを増やしたバー。

マサヒロは45歳で再びバーをオープンした。

しかし・・

看板にマジックバーの文字は無かった。

「カクテル&フードバー」であった。

居酒屋で覚えた料理とお酒を提供する店であった。

もちろん、カラオケもある。

マジックは要望があれば披露する。

マジシャンとしてもプロ。

そんなコンセプトであった。

45歳で実家暮らし独身。

「それでも、一国一城の主人として仕事が出来れば、俺は幸せだ。」

そう、自分に言い聞かせていた。

店は夜明けまで長々と営業していた。

「仕事が俺の生きがい。」

それが、マサヒロの口癖であった。

オープンから5年後・・

マサヒロは店をたたんだ。

飲食店経営は、やはり甘くはなかった。

何年ぶりだろう?

目から涙をこぼれ落ちたのは・・

自ら命を絶ちたいくらいの気持であったが・・

・・・

そんな勇気は彼にはなかった。

挿入画像03

第5章・元プロマジシャンのプライド。

マサヒロは50歳を超えていた。

親も高齢になり、もう頼れない。

50歳を超えてアルバイトを転々としていた。

「俺、元プロマジシャンなんだよ。」

そう、言って、たまに披露するマジックが少しばかりの喜びであり、プライドであった。

しかし・・

マジックを披露すると、虚しさもこみ上げるのを感じていた。

マサヒロは60歳を超えた。

両親はすでに他界。

親の残してくれた家で生活保護を受給しながら暮らしていた。

ある日・・

・・・

自分の命が残り少ない事を宣告された。

「俺の人生は果たして幸せだったのか?」

そう、自問自答しながら残りの人生を生き続けていた・・

・・・

病気と闘う気力は彼には残っていない。

「幸せだったはず。でも・・」

・・・

・・・

・・・

マサヒロは人生を終えた。

そう、

手に一組のトランプを握りしめながら・・

物語の主人公のようにならない為に。


自分の人生が幸せかどうかを決めるのは自分自信です。

マサヒロは十分に幸せであり、人の人生を指摘するなんて失礼かもしれません。

しかし・・

マサヒロは最後に「でも・・」という、人生に心残りがあったようです。

そして・・

マサヒロのモデルは実は私自身なのです。

と言うよりも・・

物語はもしかしたら、私が歩んでいたかもしれない人生なのです。

ですので・・

私的にマサヒロが人生で間違えてしまった選択がわかるのです。

それは・・

第1章〜第5章までのサブタイトルです。

①セミプロマジシャンと名乗る青年。

マサヒロは大きな勘違いをしています。

彼は「セミプロ」という言葉をプロ並みという風に使っています。

プロマジシャンの肩書自体、自称なのですから、名乗るのは自由かもしれませんが・・

年に2回程度のイベント出演の経験で「セミプロ」と名乗るのはおかしなことでしょう。


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②様々なお客様に来てもらいたいマジックバー。

第2章でマサヒロはマジックバーをオープンさせましたが、サブタイトルである「様々なお客様に来てもらいたい」というのは、小さな店舗を経営する上では大きな間違いなのです。

小規模店舗の経営で重要なのは・・

ターゲットとする客層を絞る事です。

マサヒロの店はマジックバーなのに、カラオケがあったり、カクテルの種類を増やす事に力を入れて注いだりしてしまいました。

それがダメと言うわけではありませんが、まだまだ経験も乏しい彼には、どれも中途半端なサービスになってしまったのです。

まずは他店に負けない、1番の売りをつくる事が重要だったのです。

マジックバーとして経営していくのなら、まずは、しっかりとマジックに力を入れるべきだったでしょう。

しかし・・

マジックにそこまでの自信が無かったので、中途半端なサービスを色々と増やしてしまい、結果的に店のコンセプトがブレてしまったのです。

前半なマサヒロの人生は20代までの私そのものです。

第2章の後半で県外でマジックバーを営む知人から仕事の誘いが来ます。

これは、実際の出来事であり、私は全く同じ状況で現在、手品家を全国展開している株式会社マジックポットの代表であるトリット氏から声をかけてもらいました。

実際には私は、その話を有り難く受けて、手品家高知店の店長となりました。

それから、6年間、マジックポットの社員、そして手品家高知店の店長として働かせて頂き、勉強させてもらいました。

現在は再び独立させてもらい、手品家高知店のオーナーとなる事が出来ました。

ですので、トリット氏を始め手品家のメンバーの皆様は私の恩人であり、とても感謝しております。

物語のマサヒロはプライドを優先して、この有り難い話を断ってしまいます。

つまり、これが大きな間違いなのです。

後半は私がマサヒロと同じ行動をしていたら、どうなっていたかを想像して書いています。

③プロマジシャンであり続けたい中年男。

第3章ではマサヒロは店の経営が行き詰まり、ついに、店をたたみます。

しかし・・

昼間、アルバイトをしないと生活出来ない状況になった時点で、店の経営は、すでにダメになっていたのです。

つまり・・

もっと早くたたむべきだったでしょう。

④さらにサービスを増やしたバー。

第4章でマサヒロは再びバーをオープンさせますが、また、同じ過ちを繰り返してしまいます。

店のコンセプトがブレているのです。

さらに・・

飲食店は9割が10年以内に閉店してしまう業界です。

ある程度、料理が作れるようになっただけで、やって行けるほど甘い世界ではないでしょう。

ろくに経営の勉強もしないで、飲食店をオープンさせるのは無謀なのです。

⑤元プロマジシャンのプライド。

第5章については、もし、私がマサヒロのような人生を歩んでいたら、ストレスで病気になってしまうのではないかと思って書きました。

しかし・・

人生は何歳からでもやり直す事は可能でしょう。

過去の失敗にとらわれずに、マサヒロは新しい道を見つけて、前向きに進めば良かったのではないかでしょうか?

最後に。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

関連記事として下記の3つの記事を以前に作成しています。

小さな飲食店が成功する、たった一つの方法。

誰も言わないプロマジシャンになる本当のリスク。備えるべき5つの方法。

地方のマジシャンが収入を上げる5つの方法。

よかったら、こちらも読んでみてください。


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*アイキャッチ画像:Pete LinforthによるPixabayからの画像

*挿入画像01:명산 전によるPixabayからの画像

*挿入画像02:명산 전によるPixabayからの画像

*挿入画像03:Free-PhotosによるPixabayからの画像


「プロとして食べていけなくなったマジシャンの悲惨な末路。」への2件のフィードバック

  1. 四国・新幹線で検索をして、何故かこちらの記事に辿り着いた、流れ者で御座います。
    いやぁ奥が深い! 色々考えさせられました。
    人の心を動かしてこそ、マジックで御座いましょう。等しく私の心も、マスタージャック様のマジックではなく、お言葉で動かされてしまいました。
    他の記事も拝読させて頂きます。

    1. とても嬉しいコメントを頂き、ありがとうございます。
      マイペースにですが、ブログ更新していますので、また、宜しければ訪問してください。

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