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はじめに。
第二次世界大戦の頃に戦場で活躍した一人のマジシャンがいました。
それは・・
「ジャスパー・マスケリン」
という名のイギリスのマジシャンです。
彼は、イリュージョンの技術を使って、ジープを戦車に見せたり、戦車を単なるトラックに見せたり・・
また、
港が敵軍の攻撃を受けそうになった際には、無人の別の場所に模型の灯台や建物を作り出し、敵軍の爆撃を誤らせたそうです。
ヒトラー率いるドイツ軍からの攻撃を困惑させて、イギリス軍の勝利に貢献したと言われています。
もちろん・・
本来、マジックは戦争に用いるものではありません。
しかし・・
別の意味であれば、マジックも戦いであり戦略があります。
マジックを戦闘に例えると?
マジシャンが戦うべき相手は?
マジシャンが戦うべきなのは・・
観客にタネがわかるか?わからないか?
では、決してありません。
タネがわからないなんて事は当たり前で・・
観客が楽しいか?つまらないか?
です。
マジシャンにとっての戦うべき相手は・・
観客のいる「ショーの現場」です。
観客をどのくらい楽しませることが出来るか?
その「戦い」です。
マジックの道具は武器に例えると?
例えるならば・・
カードは刀。
鳩やフローティングテーブル等、ステージ系の道具は拳銃やマシンガン。
イリュージョン道具は大砲や戦車です。
刀で拳銃やマシンガンに勝てるわけありません。
拳銃で大砲や戦車に勝てるわけがありません。
ただし、接近戦ならば、時に大砲や戦車よりも刀や拳銃が有利になる場合があります。
武器は戦う場所や敵の数によって、有利にも不利にもなります。
マジシャンも同じようにショーの場所や観客の人数によって、武器(道具)選ぶ必要があります。
観客が10名以下の至近距離ならば、やはりクロースアップが適しています。
観客が100名を超えるような大きな舞台ならばイリュージョンが適しています。
もし・・
100名の観客でもクロースアップ道具だけで、全員を楽しませることの出来るマジシャンがいるならば、クロースアップの達人のようなマジシャンでしょう。
兵士に例えるなら、刀だけで大砲や戦車と互角に戦うような、まさに勇者です。
しかし・・
たった10名程度の観客でも、正面の3~4名程度しか楽しませる事が出来ず、残りの観客を置いてきぼりにしてしまう、マジシャンもいます。
兵士ならば、とっくに死んでしまっています。
イリュージョンもおなじく100名ではなく、1000名、2000名といった、いかに大人数の観客を楽しませれるほど、素晴らしいイリュージョニストだと思います。
例えるなら、天才的な兵器の操縦士でしょう。
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マジシャンのレベルの違いとは?
要は・・
いかに少ない道具で、いかに多くの観客を楽しませることが出来るか?
それが・・
マジシャンのレベルの違いでしょう。
道具は、決して多い方が良いというわけではありません。
私が様々なマジシャンを見た経験では・・
上手いマジシャンほどショーの際に用意する道具は少なかったです。
ただし・・
道具はマジックの作品そのものですので、とても大切です。
いくら、一流のマジシャンでも、作品が三流では、一流のショーは作れないでしょう。
「シナリオが一流なら、監督が仮に二流三流でもいい映画は出来る。だけどシナリオが三流なら、一流の監督がいくら頑張ってもうまくいかない。」
映画界の巨匠と言われた黒澤明監督の言葉です。
これを・・
シナリオ=作品
監督=マジシャン
映画=マジック
に変えると・・
「作品が一流なら、マジシャンが仮に二流三流でもいいマジックは出来る。だけど作品が三流なら、一流のマジシャンがいくら頑張ってもうまくいかない」
という言葉になります。
レベルの高いマジシャンはレベルの高い道具を使います。
逆に言えば・・
レベルの高い道具を使いこなせるのが、レベルの高いマジシャンと言えるでしょう。
マジックの現象のみが出来ればいいと、安いコピー品等の三流の道具ばかりを使うマジシャンは、自分で自分のマジックを三流にしています。
一概に安い道具がダメというわけでは、ありません。
「値段」で選ぶのではなく、「道具の質」で 選ぶべき。
ということです。
最後に。
そんな事を言っている私は単なる場末のマジシャンです。
大戦からは身を隠し、平和な田舎に逃げ込んでいる兵士です。
しかし・・
「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」
2500年前から伝わる最も有名な兵法書。
「孫子の兵法」の一節。
戦争は百戦百勝しても、それが最善な策ではない。戦わずして勝つことが最善の策である。
という意味。
人間同士であれば、戦わずして勝つことが理想です。
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*画像「Pixabay」より